冒頭、死亡予告書「イキガミ」を受け取って、寿命が残り数時間しかない青年が、かつてのいじめの復讐として、その相手を殺害しようとするショッキングなシーンから始まる。確かに自分の命が残り数時間となるとやけになったり、復讐を企てようとする者が現れても不思議ではない。
国家繁栄維持法の下、国民は小学校入学時に予防接種を受けなくてはならないが、そのうちの千人に一人の割合で注射の中にナノカプセルが含まれていて、その対象者は18歳から24歳のあるタイミングでそのナノカプセルが破裂して死亡することになっている。
これにより国民は生命の尊さを深く認識し、犯罪や自殺者は減少する一方、GDPと出生率は向上して、国家繁栄の礎になっていると厚生保険省は説明している。まあ、漫画が原作のあり得ない設定での映画なので、この際、変なリアリティなどを問うことはやめよう。
主人公は厚生保険省の役人で、死亡予告書である、通称「イキガミ(逝き紙)」の配達人。イキガミは死亡予定時刻の24時間前に配達される。該当者は死亡後に国繁死亡者として、名誉ある死として遺族には遺族年金が支給される。お国のための名誉ある死。まるで戦時中の戦死者のようだ。
主人公がイキガミを配達した3人の青年の様々な最後の24時間が描かれている。笑いの要素は全くなく、メッセージ性を考えれば、命の尊さがテーマなのだろう。クライマックスシーンでは周りから女性のすすり泣く声が聞こえてきて、ちょっと興ざめ。あり得ない設定なのだからと、私は冷静だった。
今月の映画サービスデーはこんな映画を見た。
(秀)