落語に出てくる登場人物は単純に役どころにより、パターン化されている。若旦那となると、孝行息子は存在せず、ほとんどが店の売上をかすめて、遊びほうける放蕩息子と決まっている。また、ちょいと抜けた感じの男は与太郎。そそっかしい、八っつあんに熊さん。ご隠居は良い人だが、正直に「知らない」と言うことができない、依怙地さがある。
そして夫婦は決まって、かかあ天下というパターンになっている。亭主は気が弱く、だらしなく、商売が下手で、あまり賢くない。一方、妻の方は気が強く、しっかり者で賢く、夫の尻を叩いている。そして、この亭主の名前は「甚兵衛」さんと決まっている。「火焔太鼓」、「鮑(あわび)のし」、「熊の皮」。しかし、これらの話に出てくる甚兵衛さんは、設定からして同一人物というわけではない。
女房に尻を叩かれるからこそ、上手く処世していける甚兵衛さんたちが、私は好きだ。
(秀)