古くは貸しレコード屋。借りたレコードをカセットテープにダビングして、音源として確保する。その後はCDレンタルからのMDになったり、そして今では、CDが残る一方、音楽データファイルとしてデジタルデータのままスマホやパソコン等のHDDに記録されて残される時代となった。「私的利用」という言葉があり、かつてはその枠の中で許容されていたこれらのコピーもデジタルやネットワークという手段を得ることで、制限が極めて曖昧になってしまっている。
例えばCDをレンタルし、それを一旦HDDに保存。そしてもう一方は、正規のネットワーク配信サービスで音楽データを購入した場合とで比較してみる。いずれもスマホでこれらの曲を聴くとした場合、何らかの違いがあるだろうか?。ともに実際のディスクや歌詞のブックレットを持っているわけでなく、音源はあるものの、具体的なモノは何も所有をしていない。違いがあるのは、入手に要した価格差ぐらいか?。
同じようなことは映画などの映像コンテンツでも起こる。DVDを買って見る場合、借りて見る場合、ネットワーク配信で見る場合等。基本的に市販の映像コンテンツはコピーすることないだろうが、放送を録画しておいて、自己の所有とすることがこれに加わる。目的は見ること。これに、「見たいときに」という要素が加わり、それが満たされれば、いずれの形態であるかはそれほど問題ではない。それ以上にそれぞれに掛かる費用や手間の問題が優先されることが多い。
私には若干(?)の蒐集癖があり、雑誌や音楽、映画コンテンツなどの蒐集を以前から行っていた。映画については、DVD化されていない古い邦画を中心に、有料放送などを録画して溜め込んでいる。これはそれ以外の形態はないので、これで良しとしよう。しかしこれだけでなく、同様に放送を録画した映画コンテンツが増えていった。
例えば、「男はつらいよ」の全48作がファイルとなって、自宅のサーバーのHDDに収まっている。もちろんその幾つかは見ているが、全作品を見たわけではない。いずれかのタイミングで見るだろうと、その時点では蒐集すること自体が目的となってしまっている。やがて、動画のネットワーク配信のサービスが充実してきて、「男はつらいよ」の全作品はネット配信サービスで、しかも無料(個別の課金がない、という意味)で、好きなときに視聴できるようになっている。同様のコンテンツは他にも結構ある。
もはや好きなときに見ることを目的として、映画コンテンツを自己で所有することは、一部を除きその必要性が大幅に失われた。むしろ新たな(新作という意味ではない)コンテンツの流入により、既存の蒐集したコンテンツの必要性も大きく毀損される状態に至っている。もちろん、このような状況は随分以前から、予測できていた。費用の面を除いては。
一旦溜め込んだコンテンツをこれからどうすべきか?。自宅のサーバーの中でHDDがくるくると回っているだけだから、特に費用が掛かっているわけではない。どうしても逸失を避けたいコンテンツのみ、幾重かのバックアップを取って、しばし結論は先送り状態。新たなコンテンツの追加はとりあえずやめることにした。
(秀)