コラムのデパート 秀コラム

第55話 ■時効

 今年の2クール目のドラマが次々に終わりを迎えるにあたり、ここで木曜10時のフジ、「アフリカの夜」について書いておこう。舞台はメゾン・アフリカ。ここに住む住人達が主人公である。冒頭は8年前に付き合っていた、鈴木京香と佐藤浩一の再会から始まったが、結果、恋愛がテーマのドラマではなかった。最終的なストーリーは室井滋演じる惣菜屋のおかみが15年前に当時の旦那を殺害し、間もなく時効を迎えるというものだった。

 殺人事件の時効となると福田和子被告の事件を思い出す。既に一審で無期懲役の判決が出ているが、そのときの弁護側の主張が面白い。「もし、時効になっていたとしたら罪は問われないわけだから、時効を目前にした逮捕であるため、情状酌量を求める」というものであった。「逃走していた15年間にも精神的な苦痛を味わった」というものもあった。弁護士の言うことも分からないでもないが、逃げまくり、あわや無罪というところであったのだから、むしろ最終段階で捕まったからには逆にペナルティがあっても良いような気もする。

 ドラマの方は室井滋演じる役名、亀田伸枝が顔を整形し偽名を使って生活していたが、時効まであと1日というところで、警察にばれてしまった。そんなとき母親が危篤である旨のニュースが流れる。罠とは疑いながらも一目母親に会いたいという気持ちで住人達と故郷に向かい、結果時効の4時間半前に逮捕されてしまう。

 刑事事件の時効は逮捕のタイミングではなく起訴のタイミングで決まる。このため、ドラマの例では逮捕からの4時間半以内に起訴しなければならないことになる。現実的には不可能であるだろう。しかし、殺人犯を無実にするようなドラマを作るわけにはいかないのは当然である。どこか期待しながらも、やはり時効は成立しなかった。きっと暗黙の了解なのだろう。

 刑事ドラマの面白い見方を1つ。それは犯人の立場でドラマを見ることである。いつもより2倍はドキドキできる。お試しあれ。最後にはちょっとへこんだりするけどね。

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