~ 噂(好き)の女
あのガチャ切り電話の後、来年の同窓会での再会を約束して、しばらく彼女のことは忘れていた。来年もまた同窓会があるのかどうかは分からないが、そんなことはどうでも良い。とりあえず、再会の口実が出来たことだし。
やがて、次の夏がやって来て、郵便受けに往復ハガキが届いていた。
そして、舞台は冒頭のバーのカウンターに戻る。
「でね、あのときの真由美とかとの電話勝負は私の圧勝で、お金掛けてたから儲かっちゃってね」。
「ああ、あれね。俺もはめられた」。
「別にそんな言い方しなくても良いじゃない。悪かったなー、と思って、ちょっとおごってあげようと、今日は誘ったんだから」。
「あのときの犠牲者全員におごっていたら赤字だろうよ」。
「ばっかねー。秀野君だけだよ」。
「えっ?」。
「やっぱり私、去年の同窓会のとき、あなたに変なこと言ったよね」。
「変なことって?」。
「ずるいなー、とぼけちゃって」。
「あーあ、思い出した(本当はもちろん、ずーっと覚えていた)」。
「同窓会ってそんな気分になっちゃうんだよなー。あの後も、真由美とか和美とかと会ったりしてるんだけど、周りの色々な後日談が出て来てさ…」。
「例えば?」。
「あの、…….(ヒソヒソヒソヒソ)…」。
「え~~っ!!?」
誰と誰がどうなった、という、あまりにもリアルだったり予想外だった話に絶句してしまったが、それ以上に具体的なあんなコトこんなコトが、彼女の口をついて、露骨な言葉として出て来ることに驚愕した。
それに、彼女の吐息が私の耳を刺激する。
− つづく −
(もちろん、フィクション)
(秀)