映画であれ、ドラマであれ、芝居であれ、もちろん小説でも、作者はその受け手に対して何らかのメッセージを送っているものだ。主役がそれを台詞として吐く場合もあるが、これはあまりにもストレートすぎて、私としてはやや興醒め。できれば脇役や通りすがりの人にぽつっと語ってもらいたい。
その主題というか、作者の訴えたいことに、しばしば「やりたいことをやれ」というのがある。先クールの東芝日曜劇場の「恋がしたい 恋がしたい 恋がしたい」もこれをテーマにしていたようだ(最終回はビデオに録っていて、まだ見ていない)。また多くの場合、青春の一過性のテーマとしてドラマなどで取り上げられることがある。かつての「俺たちの旅」などもまさにそうだった。「やりたいこと」と言っても、「旅行に行きたい」とか、「のんびりしたい」とかいった、その手のお気軽な欲求ではない。職業や生活環境といった生き方の根本に関わる話である。
これは多くの人が共感を持つテーマであろう。受け手も日々の閉塞感からフィクションの中でそれを期待する。しかし、ふと自分の生活に当てはめてみると、さらにもやもやとしてしたものがわき上がってきやしないか?。「自分のやりたいことって何だろう?」。「どうして今の仕事をやってるんだろう?」。「本当になりたかったのは?」。本当にやりたかった仕事に就けている人はどれくらいなのだろうか?。これと言って「やりたいこと」を挙げるのも難しくなっていたりする。
やりたいことをやるには力が足りず、すべてをリセットして新しいことをスタートさせるには許されない、若くもないし、貫禄もない。そんな中途半端な年齢に今の自分はある。
(秀)