フジテレビの27時間テレビの企画として「東京物語」がリメイクされ放送された。興味があり、ビデオには録ったが、まだ見ていない。見たい気持ちはあるものの、ちょっと気持ちを押し留めるものがある。その前にもう一度オリジナルを見ておこうと思った。
オリジナルとはもちろん、巨匠小津安二郎監督が昭和28年に撮った、映画「東京物語」のことである。現代リメイク版を見る前にビデオでもう一度オリジナルを見ることにした。今見返してみると新たな発見もあり、改めてこの作品の奥深さにふれる事ができた。
尾道に住む老夫婦が東京に住む息子や娘を訪ねて上京する。世間的には立派に出世した子供達(長男は開業医、長女は美容院を経営)を持つ老夫婦は幸せである。しかし、実際に東京で彼らに会ってみると、それぞれが自分の生活に追われ、父母のことを半ば邪魔者扱いにする。そんな中、父母に最も親切だったのは実の子供ではなく、戦死した次男の嫁であった紀子(原 節子)だった。そして、東京から帰った直後、母が急死する。
小津監督が描きたかったのは「家族(愛)」であったろう。しかし、皮肉なことに小津監督は生涯独身だった。サザエさんの長谷川町子さんもそう言えば生涯独身だった。だからこそ描くことのできる家族像というものがあるのだろう。共通点は大家族である。こじんまりとした4、5人の核家族ではなく、大家族である。
主演の笠 智衆はこのとき49歳だったと知って驚いた。と言うことは、つごう40年近く、老人役をやっていたことになる。恐るべし。役の上では70歳の設定。姿もそうだが、立ち居振舞いからしても70歳として全然違和感がない。年老いてますます笠 智衆に似ていく我が父親を思い出し、ちょっと目頭が熱くなる。見る者にもそれぞれの家族愛がある。
<次話につづく>
(秀)