<前話からのつづき>
「しかし、総理。そのような宗教的な理由では公民党などの反発もあるんではないですかね?」。全員の視線が公民党に籍を置く厚生労働大臣に注がれた。しかし、彼が苦悶し、口を開く前に、他の参加者の声が割り込んだ。「そんなことを言い出したら、西暦でさえキリスト教的だと言わなくてはならなくなるでしょう」。その後にようやく厚生労働大臣は「党の対応はどうなるか分かりませんが、私は閣僚として閣議の決定に従います」と述べた。
「ところでアメリカはいつ、その『うるう曜日』を実施する予定なんだ?」。「2004年2月29日と翌3月1日を連続して日曜日にするようです」。「『うるう年』に『うるう曜日』か。W『うるう』だなこれは」。「日曜日の連続ねー??」。「この選択は結構現実的かも知れんなー」。「国民の多くも一日休みが増えただけ、ぐらいにしか考えないんじゃないでしょうか?」。「テレビとかは2日続けて日曜日の番組をやることになるのかな?」。「さあ??!」。「それは放送局などを管轄している総務大臣に一任いたしましょう」。
「それよりも実際にこの『うるう曜日』を我が国でも実施するとなると法律とかの改正問題とかはあるのかな?」。「うん、そうだ、そうだ。そっちの方が大事だ」。「はい、その点については閣議決定のみで十分かと思います。と言いますか、休日の規定に関する法律はありますが、曜日の規定に関する法律がありません。休日を新たに作ったわけではなく、たまたま日曜日と言うことで、対応できると判断しました」。「なるほど」。
「実施までまだ一年ちょっとあるし、今すぐに準備を始めれば、来年の2月には間にあうでしょう」。「カレンダーとか、印刷業界はなるべく早く決めてやらんといかん」。「金融機関とかは別に日数が変わるわけではないのであまり影響はないでしょう」。「カレンダーで気になったんだが、連続する2日の日曜日をカレンダーにはどう記すんだ?」。「あの月末最終週の日曜日とかが入りきらないときのように斜めに線を引いて一つのマスに2つの数字を入れるんじゃないですか?」。
「大臣、それなら大丈夫です」。2月29日と3月1日では、ちょうど月をまたぎますので、そのように1つのマスに2つの数字を入れる必要はありません。通常のカレンダー通りになります」。「なるほど、そうか。それなら安心した」。何とかここで閣議は合意に至り、早速その後に官房長官がこの『うるう曜日』について定例の会見の中で述べた。初めて聞く『うるう曜日』について、記者達の反応は様々だったが、閣議の場では想定できなかった騒ぎが起きたのはその翌日のことだった。
<つづく、次回完結>
●この話はもちろんフィクション
(秀)