確か、Acerだったような、しかし今となっては、はっきりとは覚えていない。思い出せない。90年代前半、そのパソコンのOSがWindows3.1だったのか3.0だったのかすら覚えていない。ただ国内ではまだ3.0で、けど英語版だったから3.1だったような気がする。だからと言って、3.1と3.0ではそれほどの差はわからなかった。最初に、DOSのオペレーションを入れて、それからWindowsをインストールするといったスタイルであった。
私が当時、会社で所属していた部署は、パソコンの販売企画部門で、メーカー系の販売会社でありながら、自社ブランドのWindowsマシンはとりあえずなかった。これから先、海外メーカーのものを中心に販売展開するにあたり、いくつかの海外パソコンを入手して、検討していたときの話である。私の上司の元に、デスクトップのあるWindowsマシンが届いた。国内では流通していないものをどういう形で手に入れたのかは分からないが、社内には国際調達部門はあったし、現地の出先の子会社もあったので、そのいずれか、はたまた親会社のルートから回ってきたのかもしれない。
まずは、珍しい。米国のパソコンの先行ぶりに国内パソコンの近未来を見るような期待もあった。フロッピーディスクドライブの横には、CD-ROMドライブが付いていた。国内のパソコンにもCD-ROMドライブ付きのパソコンはあったが、Windowsマシンではなかった。そして、起動して驚いたアプリケーションは、ミニコンポの正面の画像をしていた。CDプレーヤーをメインにしたミニコンポの絵柄である。想像通り、CD-ROMドライブに音楽CDのディスクを入れて、ミニコンポのアプリケショーンソフトを操作したら、パソコンの安っぽいスピーカーから音が出た。CDで供給されているソフトなんかないから、とりあえずは音楽CDを聞くしかない、そんなCD付きパソコンの登場だった。
そう言えば、Acerは米国ルーツのパソコンメーカーではなかったと思うが、米国進出はしていただろうから、そこに米国パソコンの事情を垣間見た当たりはお目こぼしいただきたい。それから数年遅れて、国産のパソコンにもCD-ROMドライブが装備されるようになって、「マルチマディアパソコン」なんて、呼ばれていた。今思えば、甚だ滑稽でしかない。まあ、この時期にそんなパソコンを見て、ドキドキとした感情があったから、今の自分があるのは間違いない。
(秀)