「俺たちの旅」というドラマが好きだった。’75年当時、日本テレビで放送されていた。青春ものではあるが、学園ものではなく、就職前後の青年達のドラマである。原作は鎌田敏夫。主人公は中村雅俊。役名は津村浩介で、すぐに「カーッ」となるところから、通称「カースケ」である。クラスメイトは田中健。役名は中谷隆夫というが、何をやってもダメで、「ダメ夫」転じて、「オメダ」と呼ばれている。2人はしがない大学の4年生である。’75年当時はオイルショックからの不況をまだ脱しておらず、就職も難航している。古い映画やドラマを見る上で時代背景の予備知識は重要だ。そしてもう一人、秋野太作(その当時は「津坂匡章」という旧芸名だった)がカースケの郷里の先輩として登場する。熊沢伸六という役名であるが、ニックネームは「グズな伸六」ということで「グズ六」である。彼も不況のため、早稲田卒のわりにはあまり良い職環境にはない。ただ女性には何故かよくもてる。そんな3人が同居生活を始め、毎回いろいろなことに巻き込まれて話が進んで行く。
オメダは現実的な男である。それに対してカースケは破天荒なことを繰り返す毎日であった。オメダは何とか探し出した不動産会社から、カースケと一緒に就職の内定を受ける。しかし、どうもカースケはサラリーマンには馴染まず、内定を蹴ってしまった。心配したカースケの彼女、洋子とオメダが彼の説得にあたる。
「バイト、バイトでずっとやって行くつもりなの?」(洋子)
「オレはヨーコみたいに、これがやりたいってことがないからなあ・・・」(カースケ)
[中略]
「一生なんて・・・そんな先のこと考えられないよ」(カースケ)
「その日その日が楽しけりゃ、それですむってものじゃないよ」(オメダ)
「その日その日が楽しくなくて、どうして一生が楽しいんだよ」(カースケ)
このシーンが一番印象深く、先日ビデオで見た時も「来るぞ、来るぞ、来た!」という感じを体験できた。カースケの刹那的な生き方は社会一般からすれば不道徳であろう。けど、その日その日が楽しいことの大切さを忘れて日常に埋没しかかっているようなときは、カースケの言葉に耳を傾けてみよう。さあ、レンタルビデオ屋へ急げ!