「巨泉辞職」。駅売りのタブロイド紙の見出しにはそう書かれていた。既にインターネットでこのニュースは目にしていたのでそれほど驚くことではないが、これから先のことを考えると、現選挙制度の問題点が改めて浮き彫りになる。大橋巨泉議員は前回の参議院議員選挙に民社党の比例区から立候補し、41万票を得て当選したことは我々の記憶にも新しい。
今回の辞職の理由は党執行部との確執、その批判の行動としての辞職と伝えられている。彼は比例区の候補であるため、既存の政党に移ることなどできない。離党するか、新党を旗揚げするか、そして彼はもう一つの選択肢である議員辞職を選んだ。欠員は法律に基づき、前回選挙の落選者の中から繰り上げ当選で補充されるはず。もちろん、民社党の落選候補者からである。前回の比例区の選挙は「非拘束名簿式」で行われた。政党名でも候補者名でも有効というやつである。それで大橋候補は個人名で41万票もの大量得票をなし、党の他の候補者の当選に大いに貢献した。
投票用紙に「大橋巨泉」と書いて投票した人々は彼に投票したのであって、能動的に民社党に投票したわけではなかろう。彼が辞職してしまったため、結果として「大橋巨泉」票は他の数人の民社党候補を当選させただけになってしまった。有権者をこれほど馬鹿にした制度があろうか?。何も民社党執行部だけを批判するつもりではない。結局彼はこれと言ったことを何一つやるでもなく議員を辞職してしまった。
一般に、党の懲罰の最大の罰則は「除名」である。党籍を剥奪されるわけだ。比例区(衆参問わず)からの当選者が除名となることはあるのだろうか?。たとえそうなっても、無所属あるいは新党旗揚げという方法は残っている。どこの政党から立候補しようと得票の目処の立つ候補者は怖いものなし。その一方で、得票マシンとして繋ぎとめたい政党側の思惑。制度の歪みとともに、そこには有権者への意識など微塵もない様な気がする。
(秀)