翌日の日曜日はある人からの電話で目が覚めた。さすがに夕べはあのメールのせいで寝つきが悪かった。
「克人さんですか?。お休みのところ朝からどうもすみません。佐々木です。あなたのお父さんと一緒に仕事をさせていただいていた佐々木です」
「佐々木さんですか。父の葬儀の節はどうもありがとうございました。十分なご挨拶も出来ずに大変失礼いたしました」
「実は今日これからお宅に伺いたいのですが、宜しいでしょうか?」
「ええ、別に構いません、と言うか、私も佐々木さんに連絡をしようかと思っていたところでして…」
佐々木さんが我が家の呼び鈴を押したのは電話から一時間も経っていなかった。
「すいません、急にお邪魔いたしまして」
家に上がるや、彼はバッグから一枚の紙を取り出し、私に見せた。
件名、【お礼】無事届いたようです
差出人、久山 明人
このメールが無事に届いているとしたら、私が頼んだ例の手紙が無事に私の息子の手元に届いたようですね。最後の頼みを聞いていただいてどうもありがとうございました。
それと、ぜひともあなたに見せたいものがあります。申し訳ありませんが、私の家に、息子の克人を訪ねて来てください。最後の願いの次の願いというわけです。
送信日は昨日。時刻は私が父からのメールを受け取ったまさに直後だった。
昨日届いたあの手紙を父が言付けたのはこの佐々木さんだった。
「実は私も父からメールを受け取っていて、あなたがいらっしゃることがその中に書かれていました」
「やっぱりそうですか。あなたが昨日起動したそのマシンを見せてください」
父の書斎にあるそのマシンを見るや佐々木さんは私に断ると、そのマシンを操作し始めた。
「見慣れないOSで動いているようですけど」
「ええ、これは久山さんや私たちがロボットの制御用に開発したものです」
せわしなく動いていた手を止めると、彼は急に涙を流し始めた。それは父の死を悼む気持ちとは明らかに別のものだった。
「久山さん、ついにやりましたね」
あわてて自分が持って来ていた携帯パソコンから佐々木さんは父にメールを打った。
返事は間髪入れずに返ってきた。
件名、Re:ついにやりましたね!
差出人、久山 明人
自分でその動く姿を見ることが出来ないのが残念ですが、私のプロファイルデータの自動生成が上手くいっているとしたら、ついに本格的な人工頭脳が完成したことになります。….
– – この話はフィクションです。- –
(秀)