私が好んで足を運ぶ寄席は真打になる前の、二ツ目の勉強会がほとんどである。今から見込みのある若手に目を付けておいて、老後に、「あいつ、若いときから知っている」と言ってみたい気もするが、本当の理由は木戸銭(入場料)が安いからだ。毎週の様に通っている早朝寄席は木戸銭五百円である。通常の寄席の木戸銭は二千五百円とか、二千八百円とかである。こうなると毎週通うことなど到底できない。
さて、最近落語ブームらしいのだが、その渦中に身を置きながら、私自身このブームのきっかけや原因なるものが、とんと思いつかない。落語や寄席となるとその客層のほとんどが年配者のような気がするが、二ツ目の寄席となると客層は若い人の比率が多くなる。土曜夜の深夜寄席なんか若人の方がむしろ多く、デートコースにもなっているようだ。この若い人たちとNHKドラマ「とりとてちん」はちょっと結びつかない。
早朝寄席と深夜寄席はここのところ200人は客が入るようになった。木戸銭が一人五百円だから、合計で10万円になる。出演者が4人なので、出演者一人あたり二万五千円になる。会場の使用料などはとりあえず置いておく。一方通常の定席と呼ばれる寄席の入場数は100人位だろう。一人当たりの木戸銭を二千五百円として、合計は25万円になる。出演者は10人ちょっとだ。ざっと出演者一人あたりは先ほどと同じ二万五千円になる。
出演者一人あたりが見かけ上は二万五千円と同じでありながら、定席の方の出演者のほとんどは真打である。ギャラも二ツ目に比べて高くて当然。そういう意味で最近の早朝寄席や深夜寄席といった二ツ目勉強会の集客はすごいことだ。ところで、真打や二ツ目のギャラとはいくらぐらいなのだろうか?。演芸場の取り分もあるだろうし、協会の取り分もあるかもしれない。定席で昼の部と夜の部でそれぞれ別の演芸場に出ている人も多い。
真打は定席に出ることができるが、二ツ目や前座は定席にあまり出られない。それでも前座は師匠から小遣いがもらえるそうだが、二ツ目はそうもいかない。時間はあるが仕事と金がないらしい。そのため独演会や演芸場以外での寄席を自分でやっていくしかない。二ツ目の独演会の木戸銭の相場は二千円。入場者数を100人と仮定して合計20万円。リスクは高いがこの金額は魅力的だ。力が入るのも分かる。
(秀)