第1332話 ■早朝寄席

 浅草演芸ホールで初めて生で寄席を見て以来、こと、落語に関しては知らない咄家でも十分楽しめることが分かったので、出演者をそれほど気にする事なく、次の機会を探していたところ、映画「しゃべれども しゃべれども」に出て来た早朝寄席が実際に存在することをインターネットで見つけて出掛けることにした。

 今回は上野の鈴本演芸場。ここの座席数は300くらいであろうか。そこに150人を上回る入りだったようだ。10時からのこの会は二ツ目の若手が4人出てくる。ほとんど名前も知られていない顔触れなのにこれほど人が入っているのは単に木戸銭が500円と安いからだけでなく、若手を応援しようという常連の存在が推測される。それと「しゃべれども しゃべれども」の効果もちょっとはあるのかも。定席の寄席に比べると客層もやや若い。

 各人の持ち時間は20数分である。出演順は本当かどうか知らないが、あみだくじで決めているらしい。上手いからトリというわけではなさそうだ。若手とあって、マクラが若い層の話題である。そして時事的にも新しい。古典落語ながら創作部分を織り込み、ビリーズボートキャンプなんて出てくる。総じて、皆のびのびとやっている。それは楽屋や会場に真打のような偉い人がいないからではないだろうか。

 落語は話のストーリーのみではなく、それをどう表現して伝えるかの表現芸術である。知っている話でもそれをどう演じるかを見るところも楽しい。同じ演目を何度か見てみて、それを自分なりに比較できるようになれば良いなあと思っている。とりあえず天気が良くて早起きできた日曜日の朝は、早朝寄席にしばらく通うことになりそうだ。

(秀)