「新型インフルエンザ」なるものが、水面下で話題になっている。既存の季節性インフルエンザとは異なり、鳥インフルエンザが突然変異を起こし、それがヒトとヒト間で感染する状態になったものが新型インフルエンザと考えられている。抗体を持った人間がいないため、その感染力と強毒性は甚だしく、大地震を上回るダメージが予想されている。しかも、新型インフルエンザの発生は確率的に間違いなく、それは大地震の発生よりも確率が高く、もはや、いつ、どんな形で発生するかの問題なのらしい。
そのタイミングでの映画「感染列島」の登場である。2011年の正月休みに東京都下で新型の感染症が発生した。最初の患者はインフルエンザの検査では陰性であったため、風邪と診断されたが、翌日に急変して病院を訪れ、その症状から、新型インフルエンザと疑われた。次々に院内感染が広まるとともに、周辺住民が同様の症状で病院に殺到した。早速、厚生労働省などが対応に追われるが、有効な手立てがない。それどころか、新型インフルエンザと思われるパターンのウイルスが検出されない。よって、新型インフルエンザとは別の感染症と判断された。
やがてこの感染症は全国に広まり、スーパーでは収奪が行われ、やがて街からは人の姿が消える。病院は有効な治療方法がないまま、ただ耐えるしかなく、そして多くの人が亡くなっていく。結局、ある無名なウイルスオタク研究者によって、ウイルスの検出が成功したが、まだワクチンの開発までは時間が掛かる。
感染列島というタイトルながら、ある一つの市立病院が舞台である。全国的な話の展開や国民の生活レベルの描写がほとんどない。このようなタイトルを付けるのなら、国家レベルの、例えば厚生労働省をベースにするなど、もう少しマクロ的な観点からの描写が良かったような気がする。一つの病院に注力してしまうと事態が矮小化されてしまうから。また、字幕で感染者数や死亡者数が表示されてもリアル感が足りない。このあたりが残念だった。
(秀)