第2078話 ■スペイン風邪と集団免疫

 今から約100年前のスペイン風邪について確認してみた。大きな括りとしてはインフルエンザということになる。後から分かったことだが、鳥インフルエンザウイルスに由来するもので、その突然変異体だったと考えられている。感染者は全世界で5億人。当時の世界人口の比率では27%にあたるようだ。死者数はあまり明確にカウントされていないが、1億人を超えていたとみられている。

 日本国内の状況を見れば、当時の人口5,500万人に対し、2,380万人が感染(人口比:約43%)し、約39万人が死亡した。当時の死因の判別のうち、肺結核等とされたもので、実はスペイン風邪と思われる症例もあるらしく、厳密にカウントすれば、もっと多くの死者が出ていたという説もある。公衆衛生状態や医療水準・態勢などを比較する明確な指標などないが、現在の方が格段に好条件であることは容易に想像がつく。

 時期としては、1918年から1921年ということで、収束までには約3年間を要している。では、当時はワクチンなどない状態ながらどうして事態が収束したかが気になった。答は「集団免疫」によるものだった。国民の半数弱が感染し、その人が抗体を持つことで、感染を媒介する人が減る。しかも、当時の日本の人口は現在の半分弱で、密集度とか行動範囲を考えれば、今よりも人流による感染は抑えやすかったと思われる。

 今回、集団免疫による収束を目指すには、抗体による免疫獲得を人口の75%とする目安が出ている。実際にそこまでに至る前にも、感染は急速に衰えて効果が実感できるはず。ワクチンの接種は自分が感染しなくなるだけでなく、世の中全体の感染を抑える効果があることをマスコミ等はもっともっと訴求して欲しい。

(文中の感染者数や死亡者数には諸説あり)

(秀)