学年も終わりの頃となり、思い出すに、この頃の教科書はだいぶ痛んでいた。4月に真新しい、輪ゴムで留められたその教科書を手にしたときの、そして最初に、そぉっと丁寧に折り目を付けた気持ちはどこに行ったのだろうか?。
ページの隅にはパラパラ漫画を書いた。ロケットが飛んでいく。けっこう根気がいる。そして聖徳太子はメガネを掛けている。英語の教科書はイラストが多いので、いろいろといたずらの書き込みも多い。東京書籍のニューホライズンに出てくるマイクの顔はKISS(アメリカのロックバンド)のメイクになっていた。もちろん真面目に記憶のためにアンダーラインを引いた箇所もあるが。
中学校公民の教科書に出てくる、ルソーは沖雅也に似ていた。また歴史の時間に我々が「足利尊氏」と習ったヒゲ面の武者の肖像画は、その後まったくの別人であることが分かった。「モホロビチッチ不連続面」。地学で習ったようだが、説明などできない。言葉だけが記憶に残っている。「バスコダガマ」。歴史の大航海時代で出てきたはず。有名な探検家であるから教科書に載っているのだろうが、果たして教科書に載るほどの偉業がなんであったか思い出せない。言葉の響きが面白くて記憶に残っているだけにすぎない。
来年度(この4月)から公立の小・中・高校が週休2日制になる。これに伴い、授業数も少なくなるが、学習指導要綱で定めたカリキュラムの総量(学ぶべき内容)は約3割減になるらしい。これは授業数の削減量よりも大きい。その差分は「ゆとり」の時間なのだそうだ。小学校で習う円周率は3.14から3へ、台形の面積を求める公式はなくなり、中学校で習った二次方程式の解の公式は高校で習うことになった。自然と教科書は薄くなる。学力低下や受験産業の加熱が懸念されているが、パラパラ漫画のボリュームへの影響も心配される。「バスコダガマ」や「モホロビチッチ不連続面」は果たして無事なのだろうか?。
(秀)