コラムのデパート 秀コラム

第861話 ■無効票の行方

 3週間ほど前、沖縄県豊見城市の市議選で、約1600票の不在者投票分が無効になるという事件が起きた。その原因は投票締め切り時刻までにこれらの票を投票箱に入れ忘れたというもの。アホな選管委員のミスである。最下位当選者と次点者の得票差は45票。この1600票で当落が逆転することは十分あり得る。場合によっては最下位当選者よりも多く得票していた候補者が落選する可能性も、次点者の次の候補者が当選する可能性も否定できない。少なくとも次点者の気持ちは収まらない。

 このようなミスをおかした担当者の責任であることは確かであるが、そもそも投票時間終了までに投票箱に入っていない票を無効とする「公職選挙法」に欠陥があるのではなかろうか?。同様の事件は他でも起きている。不在者投票というのは近くの投票所というわけにいかず、わざわざ市役所や支所まで出向いて、身分証明書を提示し、投票日に不在であることを書類で申請する必要がある。私も以前一度だけやったことがあるが、印鑑も必要で、当時、旅行やレジャーが理由の申請は認められていなかったと思う。今は随分緩和されたらしいのだが、わざわざ手間を掛けてまでも投じた票である。それなのに、むしろ熱心な選挙民の権利がこんな形で無効にされてはたまらない。

 今回の失態に気がついたのは開票が終わって票数と名簿を照合したときらしい。数が合わなかったのも当たり前。不在者投票分を大事にしまいこんでいて、忘れてしまっていたのだろう。担当者も後回しにせず、投票が始まってすぐに不在者票を投票箱に入れておけば良かったのだ。きっと、夏休みの宿題は休み終了直前にやり始め、毎日の時間割も前の日ではなく、当日の朝にやっていたのではなかろうか、この担当者は、と私は勝手に推測する。

 結局、当選者一名と落選者二名が選挙を無効として市選挙管理委員会に異議を申し立てたり、無効票の開票を求めたりした。同様の事件は半年ほど前に宮崎県門川町でも起きている。このときの無効票は200票、これに対し当選者と次点者の得票差は30票だった。この場合、県の選管が「200票が選挙結果に影響を及ぼす可能性がある」と選挙の無効を裁決した。その後裁判にもなったが、高裁判決でも選挙無効との判決が出ている。

 今度は当選していた側が収まらないだろう。現に、宮崎県の例で選挙無効の取り消し請求訴訟を提訴したのは当選者の側だった。そして、この裁判においても無効票は開票されなかった。本当のところを知りたいところだが、これは闇に包まれたままだ。選挙のやり直しとなると選挙民は再度投票に足を運ばなければならなくなる。おまけに選挙のために本来不必要な金が税金から支出される。投票日には休日出勤手当てが出る。ところで、今回ミスをした委員もこの手当てをもらっていたのだろうか?。アホな選管委員のために選挙民が被った不利益の賠償請求訴訟が何故起きないのか不思議な気もする。

(秀)

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