クリスマスと言えば、菓子ブーツであった。別にサンタがプレゼントしてくれるでもなく、自分で買いに行って、数日部屋に飾っておいて、イブの日にお菓子を食べるのだ。その当時、それがいくらぐらいで売られていたか、覚えていないが、当時の物価水準などから判断して今の半額以下だったと推測される。おそらく500円はしなかったと思う。300数十円ぐらいではなかっただろうか?。今のようにキャラクタータイアップでパッケージに妙に金の掛かったものではなく、大きさも結構小振りだったような気がする。
ブーツの素材は厚紙。それに銀紙のようなものが貼られて、縁は赤のフエルトのテープで縁取られている。そして、正面には小さなサンタのお面のようなものが貼り付けられていた。上には網が付いていて、そこからこぼれんばかりの菓子が顔を覗かせてはいるが、それは見掛け倒しで、網の部分だけでほぼお菓子の収納は終わっていて、中はスカスカ。その虚しさが私にとってのクリスマスを象徴していた。
プレゼントは貰えないまでも、とりあえず金を貰って菓子ブーツを買った。そしてとりあえずはケーキもあった。しかし当時のケーキのほとんどがバタークリームケーキだった。それでも当時は平気で食べていたが、今となってはあまりにもしつこい味だったような記憶だけ残っている。夜はクリスマスパーティーではく、子供会のクリスマス集会だった。それがお寺の本堂で催されていた。それはお寺の本堂ぐらいしか子供会の集会に適した場所がなかったからに過ぎない。
高度経済成長が一段落した頃。「クリスマス・イブ」も「ラストクリスマス」も、もちろんユーミンもマライヤの曲も流れない、まだまだ静かなクリスマスの夜の話。クリスマスは子供のものだったような気がするのは、当時私が子供だったからだろうか?。
(秀)