コラムのデパート 秀コラム

第2077話 ■知っていることの価値

 クイズ番組のブームが何年か周期でやってくる。スタイルやターゲットを微妙に変えながら。以前、当コラムでもクイズ番組について書いていたが、改めて読み返すと、それは13年前のこと。視聴者参加やNHKのものを除いて、タレントが回答者となる番組が、そのときは10個確認されていた。ただ、今思えば、ここに集計できていない番組もあったような気がする。

 前回の原稿のときは、おバカタレントを大量に生み出すような、難易度の低い番組が多かったようだが、最近は「東大王」など、高難易度の傾向にある。元々はお笑い芸人だったと思うが、クイズ番組でしか見ることがない、クイズ(番組)タレントなる存在もある。

 私はこのようなクイズ番組で難しい問題が解けるとか、早押しがすごいということに対しては、すごいなあ、とか彼らに魅力を感じることはない。確かに、以前は「知っていること」自体に価値があったと思う。しかし、今となってはクイズの答なんて、パソコンやスマホで検索できるからだ。本当に必要なのは知識ではなく、考えること、思考にあるはず。クイズ作家もどうせ、ネットを使って問題を作ったり、調べたりしているだろうし。個々の人間の知識なんか、スマホで呼び出せる質や量に比べると遥かに及ばない。実際にこのような情報を記憶することにそれほどの価値があるとは到底思えない。

 私はむしろ、答や解決策を「知っていること」よりも、それを「知っている人を知っている」ことに魅力を感じる。会社で分からないことがあると、その人に相談する。その人は私の疑問に対する答を持っているわけではないが、「それなら、○○さんが詳しいから、聞いてみると良いよ」と教えてくれる。それが決まって的確だった。もちろん、ネットで調べられるような希薄な情報ではないし、社内特有のことは、ネットなんかには出ていない。私もその「知っている人を知っている人」になりたいと思ったが、そのポジションに達する前に会社勤めをやめてしまった。

(秀)

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