じゃんけんの出目を数学的に考えればそれぞれが、33.3パーセントということになるが、実際にはそうきっちりと3分の1にならないことが多い気がする。数学的に33.3パーセントであっても心理学的な要素が加わると、その出目が多少変化することも有り得るかもしれない。ある人がこんな話をしてくれた。「じゃんけんに勝つコツがある」と。その人のじゃんけんの理論は「最初の一手にグーを出す人が多い」というものである。なぜなら、「パーはあまりにも無防備すぎ、かと言って、チョキはとっさに出すには形が複雑」だかららしい。よって、一手目にグーを出す人が多く、それを狙ってパーを出すと33.3パーセントを上回る確率で勝てるらしい。
確かにその人は飲み会の後のおつり争奪じゃんけん大会などでもめっぽう強かった。特に初対面同士やあまり親しくない者同士だと、この理論がよくあてはまり、勝率も上がるそうだ。私も何度か意識して、じゃんけんの出目を調べたことがあるが、一手目は言われてみれば、グーが最も多く、チョキが少数だったことを記憶している。しかし、この理論も一手目で決着がつかない場合や大勢で一斉にじゃんけんする場合は効果が小さくなる。だったら、それは理論と呼んではいけないかもしれないが。
しかし、この理論を無力化するおまじないが存在することに私は気がついた。それは、「最初はグー」というおまじないである。一般的にこの掛け声は参加者同士がタイミングを合わせるために使用しているようだ。しかし、私の考えによるとこれは単にそれだけにとどまらず、一手目にグー以外の拳を出させるために、じゃんけんの神様が仕組んだ動作のような気がする。「最初はグー」と来ると、その直後の勝負一手目にパーやチョキも出し易いし、かえってグーの二連発に抵抗を感じる人もいるかもしれない。じゃんけんの神様は常に勝率が平等であることを願って、こんなおまじないを我々に与えたと思う。