第819話 ■サザエさんとのじゃんけん

 ずっと長い間、毎週日曜日のササエさんのエンディングは「んが、うう」と決まっていた。「来週もまた見てくださいねー」と言った後、彼女は手に持った紙袋からお菓子を取り出し、それを空中に投げ上げ、口で受けたところを喉にそのお菓子をつかえてしまう。そこで、「んが、うう」である。あれが何のお菓子だったのか?、ずいぶん気になった覚えがある。

 お菓子を投げて食べるやり方に「子供が真似をする」というクレームがついたらしい。そう言えば、仮面ライダーの真似をして大ケガをする子供が出たらしく、それから真似をしないように、番組で注意を呼びかけるようになった。西城秀樹が「ブーツを脱いで朝食を」のイントロで火のついたライターをかざすようなポーズの振り付けがあったが、それを真似して子供が火事を起こす事件が起きた。もちろん即座にこの曲のイントロの振り付けは改められた。

 サザエさんもさすがにクレームには勝てず、このスタイルを変更し、視聴者にじゃんけんを挑んでくるようになった。「よおーし、受けて立とう!」。画面に向かって拳を出すような真似まではしなくとも、心の中でグー、チョキ、パーのいずれかを唱えてたりする。勝ったからといって、何も得することはない。ただあいこだと、決着が翌週に持ち越されて気持ち悪い。そして負けてしまうと、その一週間、良いことがないような気がして悔しい。翌週へのリベンジを誓うも、この時間は風呂に入っている事が多い。リベンジが果たせないままということになるが、前回の勝ち負けなんか、「こち亀」を見終わった頃には忘れてしまっているもんだ。

(秀)