~ ガチャ切りの女
翌日、と言っても去年の翌日。
「もしもし、秀野君?。私、分かる?」
「うん?!」。
「キョウコよ、カタギリキョウコ」。
「ああ、昨日はどうも」。
「ねえ、昨日私、あなたに何か変なこと言わなかった?」。
「変なこと?。ううん、別に何も。(あの告白のことか?)」。
彼女からの突然の電話には驚いた。どうして自分の携帯の番号を知っているのか気になって聞いてみると、昨日何人かに教えた番号が出所であることが分かった。
「ねえ、今日何してる?。これから会えない?。…」。
「ごめん。今空港なんだ。明日から仕事だからこれから東京に戻るんだ」。
「ツー、ツー、ツー…..(いきなり電話切れる)」。
「うん?!」
電波の状態は悪くないはず。向こうの電波の状態か?。しかし、その発信元の番号は携帯のものではなかった。
とりあえず、自分から掛けなおしてみる。
ワンコールで相手は出た。しかし、声が違う。
「ダメだよ、秀野君電話して来ちゃ。あーあ、負けちゃった。ちょっと替わるね」。
「もしもし、びっくりした?、驚いた?。今の声?。真由美だよ」。
まんまとはめられた。彼女たちは前日の同窓会で聞き出した男達の携帯の番号に電話をしてはガチャ切りし、その後に相手が電話を掛けてくるかを競っていたらしい。30過ぎた女がそんなことで遊んでいるとは。もちろん自分はそんな女達に遊ばれている、これまた30過ぎの男である。
− つづく −
(もちろん、フィクション)
(秀)