当コラムも本日を以って700話に達した。この700話の達成を祝い、ロドルフ殿下よりお祝いのメッセージが届いており、…と言うのは嘘で、これまで100話単位の切りの良い回には、コラムに対する所信表明めいたものを書いてきたが、つらつら日々書き連ねていればそんな回が一定ごとにやってくることはごく自然なことで、切りが良い回自体に特別な意味があるわけでなく、また所信表明もほぼ述べ終えたので、今回はレギュラーメニューということで、いつものような与太話を書く。
もう20年くらい前になると思うが、コーヒーのテレビCMにたいそう品の良い方が出演されていた。そのお方の名前はロドルフ殿下。あまり詳しいことは覚えていないが、殿下と呼ばれるからには相当偉い方に違いない。お城にお住まいで、執事がそのコーヒーを持ってきて、殿下はそれをたいそう美味しそうにお飲みになる。カップはきっとマイセンか何かの高価なものなのだろう。そして最後に商品が紹介される、そんなCMだった。
さてここで、肝心のコーヒーに注目してみよう。スポンサーはネッスル。種類も多く、インスタントコーヒーの国内シェアとしてはダントツだったに違いない。そして、そのCMの中でロドルフ殿下が飲んでいるのは、その名も「NESCAFE PRESIDENT」。殿下どころか大統領閣下である。何とも高尚なブランド名だ。名前だけでない。瓶や金文字で「PRESIDENT」と表記されたラベルにもその雰囲気は込められていた。けどちょっと待て。殿下だよ、殿下。小野寺昭(「太陽にほえろ」より)ならまだしも、お城にお住まいの殿下様(二重の敬称でおかしな表現であることは分かっている)がインスタントコーヒーを旨そうに飲んじゃダメだろう。しかも、執事がいながらインスタントかい!。そのCMを見て、「PRESIDENT」を買ってみたが、不思議と自分も高尚な気分になれた。特にミルクたっぷりのアイスカフェオレにすると旨かった。
ビートたけしも当時そんなネタを使っていた。ネスカフェのCM手法は直接的に「旨い」などと言わせるのではなく、くつろぎながら飲むそのときのその雰囲気を味わうことを前面に出したものだった。それは現在にも受け継がれている。そのせいか、そもそも、ネスカフェのCMには怪しい部分が多かった。長い間シリーズでテレビCMが流れていた、「違いが分かる男」。高々インスタントコーヒーのCMには大袈裟なコピーだ。「赤ラベル」と「ゴールドブレンド」の違いが分かるとでも言うのか?。そんなことまでいろいろと思い出しながら書いていたら、頭の中であの「ダバダー、ダ、ダ、ダバダー、ダバダー。ダバダー、ダバダー、アー」(本当はロングバージョンなのだが、表記が大変なのでこれくらい)、というCMソングがこだまし始めてしまった。カフェインよりも眠れないかも。
(秀)