第721話 ■コーヒーサーバの進歩

 インターネットが世間にようやく知られ始めた頃、「世界一有名なコーヒーサーバ」というものがあった。ある研究機関の学生がコーヒーサーバをWebカメラでインターネットに配信しているだけのサイトでしかない。そもそもはコーヒーサーバにコーヒーがあるかどうかを確認して、コーヒーを注ぎに行くためのものだった。それなのにそのURLが広く知れわたるようになると、まったく関係ない人もそのサイトを訪れ、おせっかいにも「もうコーヒーがないよ」とその管理者宛てにメールまで送ってくる人までいたらしい。

 最近では「Iポット」なるものが存在する。老人介護を目的としたもので、一見普通の電気ポットであるが、通電した際や給水した際に管理者にメールを配信する機能が付いている。あいにく現物を見たことがないので、それが電話線に繋がっているのかどうかなどは分からない。年寄りはお茶が好きだから、ちゃんとこのポットが使用されているということは健康だと遠隔的に判断できるということだ。

 一方、オフィスもIPアドレスを持っているのはコンピュータばかりではない。プリンタはもちろんのこと、コピー機もIPアドレスを持ち、プリンタとして使用できたり、コピー機のスキャナ(原稿読取部分)がネットワークのスキャナとして使用でき、坂本龍一はこれで楽譜をメールで送っていたりする(某社のCM)。

 いずれオフィスコーヒーのサーバにもIPアドレスが振られ、カメラなどなくても席を立つことなく、その状態を知ることが出来るようになるだろう。「世界一有名なコーヒーサーバ」も当時はその馬鹿馬鹿しさが面白かったのだろうが、同様のものが形を変え、身近にやってくる日は近い(のか?)。何かを管理しているつもりでも、実のところ、我々もこれらの機械たちを通して、更なる誰かに管理されているのかもしれない。

(秀)