第1007話 ■バニラ・コカコーラ

 ひょっとして、全国的な話題じゃなかったらゴメン。バニラ・コカコーラなるものを今飲んでいる。会社の帰りに立ち寄ったコンビニで売っていた。ちょっと変わったデザインのアルミボトル缶のコーラだなあ、と思った。隣にはアロハ仕様の派手派手しいビンボトルが並んでいて、「アルミボトルもデザインが変わったのか?」、程度にしか思わなかったが、冷蔵庫に貼り付けられた「バニラ・コカコーラ」などという張り紙を見て、店の冷蔵庫の扉を開けてみた。ボトルを手に取り、原材料の部分を眺めてみたが、「バニラ」なんて言葉はどこにも書いていない。いろいろ推測するよりもまずは飲んでみるしかなかろうと買い求めた。

 食事を終え、パソコンを開いて、自宅の冷蔵庫から、かのボトル缶を取り出した。いつもならここでキャップを開けてそのまま飲んでしまうのだが、ここでグラスを用意した。別に改まったわけではない。「何色なんだろう?」という興味がそうさせただけだ。出てきたのはちょっとがっかり、いつもと同じコーラの色だった。泡立ちがちょっと弱い。匂いを嗅いでみる。バニラと言うよりもチープな薬品臭い、偽物コーラのような匂いがする。

 飲んでみた。ごちそうさま、もういらない。コカコーラが日本に上陸した直後に「薬品臭い」とその味を嫌う人がいたらしいが、まさにこんな感じだったのだろうか?、という気がした。多分これはこの一夏だけで終わるね。そのうち、「『バニラ・コカコーラ』ってあったよね」、なって会話のネタになったりするかも。けど、「『ファンタ・ゴールデングレープ』ってあったよね」とか「『ファンタ・アップル』ってあったよね」などという話は聞いたことがないから、しばらく後には世間から忘れ去られてしまうんだろうなあ。とりあえず、私は書きとめておこう。

(秀)