第1090話 ■ハムの人

 今年もお歳暮選びの季節がやってきた。テレビCMでもここ数年馴染みとなったシリーズの新作が流れている。その中にやはり「ハムの人」はいた。絶妙なキャスティングだと思う。あまりにも露出していて、名前が売れている人はこの場合良くない。例えばこれが田村正和では「ハムの人」という言葉は生まれてこないだろう。まず、見ている側は、「田村正和」と認識するし、制作サイドも「ハムの人」という言葉の使用など自重するに違いない。

 しかし、ハムの人はハムの人である。写真を見せて「この人誰?」と街頭インタビューすれば、100人のうち90人以上は「ハムの人」と答えるであろう。残りの数人も、正しい役者としての名前を答える人よりも、「知らない」と答える人が多いと私は思う。私も「別所」までは出てきたが、フルネームでの別所哲也は出てこず、インターネットで調べた。もちろん検索ワードは「ハムの人」。

 ただこのCMにも大きな問題点がある。ハムの人ばかり目立ちすぎて、どこの会社のCMだったかの印象が薄い。「日本ハムだっけ?」、なんてことになってしまう(正しくは丸大ハム)。このCMを見てお歳暮にハムを贈ろうという気になった人も、いざデパートに出向いてハムを選ぼうとして、値段や展示の状況、店員の働きかけ等で別会社のハムを選んでしまう可能性が出てくる。

 その名の通り、ハム業界全体のためのCMという覚悟もいくらかはあるのだろう。またデパートではハムの人のポスターやポップなどで告知はやっているのかな?。ところでこの業界の人々は必ずお歳暮にはハムを贈っているのだろうか?。社内販売で買って、親戚などに贈る分は良いが、上司などへの贈り物というわけにはいくまい。ハムを贈りあっているとすればそれも妙で、毎回ハムが贈られて来て大変な「ハム部長」なんてのも存在しているかもしれない。余計なお世話だが。

(秀)