第1100話 ■それが大事
- 2004.01.09
- コラム
「太鼓の達人」というゲームがある。そもそもはゲームセンターなどに置かれたアーケードゲームというものだが、PS2用の家庭版も発売されている。多分読者諸氏も知っているだろう。このゲームに限らず、アーケードゲームの魅力というのは家庭用ゲーム機をはるかにしのぐリアルさであろう。まずもって、コントローラーが違う。太鼓の達人は文字通り、曲に合わせて太鼓を叩くものだが、ゲームセンターのそれは大きさと言い、質感と言い、それに実際に叩き出される生音も太鼓にかなり近い。家庭用ではこうはいかない。
私がよく行くスーパーの子ども服売り場の奥はゲームコーナーになっている。そこから見事なバチさばきというか、太鼓の音が聞こえてきた。もう一つ忘れていた。アーケードゲームの魅力のもう一つは観客の存在である。多くのゲームセンターでこの太鼓の達人は観客に最も目立つ位置に置かれている。このため、うまいプレーヤーなら多くの観客の称賛を得ることができる。
その見事な太鼓を叩いているのは小学校高学年の男の子だった。画面の指示に寸分違わず、面の中央を打つ、「ドン」と、縁の部分を叩く、「カッ」のコンビネーションが見事に繰り出されてくる。しかも手首のスナップが良いのだろう、伴奏よりも大きな音で太鼓の音が出ている。大人も含めて、こんなにうまいこのゲームのプレーヤーを見たことがない。「ドン、カッ、ドン、カッ、ドン、カカカッカ」、ってな感じ。まばたきもせず、淡々と機械のように正確にリズムを刻んでいる。
そこで彼の後ろに回りこんで、いったいどんな曲を叩いているのか画面を見た。「それが大事」。大事マンブラザースバンドが90年代の初頭に歌ってヒットした曲である。そのバンド名とこの曲名の関係からしても一発屋と運命付けられたようなもんだ。太鼓を叩いている少年にとっては自分が生まれた頃の曲であろう。どうして彼がこんな曲を知っているのか?。それ以上にこの曲をこのゲームに採用した担当者のセンスが不思議でしょうがない。
(秀)
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