第144話 ■お手軽の可能性
人の心の中を数値化することがもし可能ならば、是非それについて研究してみたい。私達の生活は随分快適で便利な形へ進化して来た。しかも最近は「軽薄短小」であることが便利さの一つの尺度として機能し、重宝がられている。しかし、この手軽さが善悪の境までも狂わせている。ネット型犯罪やテレクラによる出会いからの先、など。借金もお手軽なら破産もお手軽。そして価値観や恋愛の感覚にも影響を与えている。
ロンブーのテレビ番組を見ていると最近の若い男女は随分簡単に付き合ったり、関係を持ったりするもんだなと思わざるをえない。その動機がお手軽だから、その状態を止めることもこれまたお手軽なものなのだろう。「今は付き合っている人がいないから、とりあえず付き合っておく」ってな感じが伝わって来る。さて、これを数値化してみよう。「告白して来た相手は好みのレベルからすると60点であるが、特に今付き合っている人も好きな人もいないので付き合うことにしよう」。60点というのはあくまでも仮定でしかないが、もしそうだとすると、それ以上の異性が現れる可能性は非常に高く、実際にそうなった途端に二人の関係は終焉するか、並列で進行するかの道を辿るのである。もちろん、最初は60点であっても後にポイントが増して行くことはあるだろう。しかし、ひょっとしたら50点を切っている状態でスタートしたんじゃないかというケースをテレビで目の当たりにすることがある。
しかし、逆にポイントが高すぎるのも問題である。それは単なる思い過ごしでしかない。自分の人生を振り返ってみて60点の人に100点の相手など、そうそう現れるものでない。その人のものさしが狂っているわけで、そんな人にはきっと120点という人がいつか現れることだろう。そもそも採点がお手軽だっただけのことである。「モーニング娘。」言うところの「恋はインフレーション」ってなわけやね。
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