第1549話 ■絵の具道具セット

 昭和40年代初頭に生まれた私たちの世代が、絵の具道具セットが登場した最初の世代に近いのではないかと思っている。絵の具にパレット、絵筆数本。これに申し訳程度の筆洗いのプラスチック容器が含まれていて、男の子は青(と言うか、水色)、女の子は赤の横長のソフトケースに収まっている。

 私が小学校に入ったときには、画板にもなる画材入れのバッグを買ってもらって、それに兄からのお下がりの絵の具や筆を入れていた。そして、初めて「絵の具を持ってきてください」と先生に言われたときに、そのバッグを持って行った。絵の具の箱がプラスチックで、ふたがパレットになると、兄に教えられていたので、そうして色を塗ろうとしたところ、隣の席のT君はパレットの存在を知らず、私の真似をして、絵の具の紙箱のふたに絵の具を出してしまって、先生に止められていた。

 そんな中、クラスで数人は絵の具道具セットを持ってきていたと思う。それからしばらくして、ねだったのかどうかは覚えていないが、私も絵の具道具セットを買ってもらい、それを使用するようになった。それから数年後、申し訳程度の筆洗いの代わりに黄色いプラスチックのバケツが流行り出し、絵の具道具と一緒に黄色い筆洗いバケツを持って登校する小学生が一般化した。

(秀)