第1647話 ■iQ ~小さいことの付加価値

 週末に車の点検でトヨタのディーラーに出掛け、そこで初めてiQの実車に見て触れた。ついでに乗った(走ってないけど)。iQとはトヨタが去年発売した超小型車だ。しかし、軽自動車ではない。ちゃんとした普通乗用車だが、普通の軽自動車よりもコンパクトなのだろう。全長は3メートルにも満たない。

 予想した通り、車内は狭かった。4人乗り車だが、運転席のすぐ後ろに後部座席が接している。後部座席には足の置き場所がない。正座しようにも天井が低く、それはできないだろう。辛うじて助手席側は前方のグローブボックスがないので、座席を前につめることで、どうにか助手席の後ろには人が乗ることができる。そんな自動車だ。どう見ても最大3人乗り。

 驚くべきことがいくつかある。この車の値段が140~160万円もする。軽自動車のざっと倍だ。そのくせ、大人4人が乗ることができない。そんな車なのに、この車、国内カーオブザイヤーを受賞している。不況のために華々しい車がなかったせいかもしれないが、自動車雑誌記者などで構成されるプロの目でこの車が評価されているのだ。

 軽自動車の多くは、限られた規格やコストと戦いながら、如何に大人4人が快適に乗車できるかを懸命に具体化している。それに対してiQのコンセプトは真逆にある。如何にコンパクトに詰め込むか?。たとえ定員が実質3名でも良い、という感じだ。小さいことに付加価値がある。いっそ割り切って2人乗りにしてしまっても良さそうだが、4人乗りにしてしまったのは欲張りな日本人の性質を考慮してのことだろう。

 小さいけれども値段が高いのには理由があって、小さくするために安全装置を充実させ、このクラスではあり得ないほどのエアバッグなどが装備されている。これでは高くなってしまうはずだ。そして敢えて安売りをしないような方針で、ものづくりをしている。

 選択肢が幾つもある軽自動車や小型車両とは全く異なるポジショニングの商品。実際に売れているかどうかはさておき、世の関心度は高いようだ。しかし大きな車が好きな私には、あまりこの車の良さは共感できなかった。まあ、価値観はそれぞれ。

(秀)