第1727話 ■中華DEコント

 会社の近くにある中華屋があって、高価な割にはいつも女性が行列を作っている店だったが、ある日突然、閉店してしまった。あれだけの行列を毎日作りながらも閉店してしまったことは私には謎だったが、ランチタイムでさえ千円以下で食べられない店とあって、個人的にはその店が閉店しようと何の影響もなかった。。

 そして、しばらくそのスペースは閉店したままだったが、先日そこに別の中華屋がオープンした。その中華屋はこれまた会社から歩いて行ける距離にある中華屋の支店で、大して美味くはないのだが、まあ、連れとの付き合いで店に入っていった。どうやら居ぬきで内装は元の中華屋のまま、テーブルや椅子も前の店のものをそのまま使っているらしい。客の収容人数は百人くらいで、新規オープンということか、結構混んでいた。

 店員が注文を取りに来るが、中華屋らしくか中国人ばかりである。注文用の携帯端末を手に持っているが、操作がスムーズにいかない。私は五目焼きそばセットを注文し、連れの二人は回鍋肉セットを注文した。私の注文は2分程度ですぐに出てきた。けど温かくない。早速食べ始めたが、連れの料理がなかなか来ない。それどころか、周りを見渡すと、私たちよりも先に店に来ていた人たちの所にもまだ料理が出ていない。

 「もうだいぶ待ってるけど、まだ料理が来ないんだけど」。「料理は何ですか?」。「鶏肉とカシューナッツの炒め」。「こっちは青椒肉絲(チンジャオロース)」。「エビチリ」。「はい、少々お待ちください」と言って、店員は厨房へと向かう。別の店員を捉まえて、「回鍋肉まだ?」と連れも問い合わせる。何度か店員が料理を運んできたが、注文したものとは別のものばかりを運んでくる。

 しばらくして、鶏肉とカシューナッツの炒めが届いた。するとその直後に別の店員が鶏肉とカシューナッツの炒めをもう1つ持って現れる。「もう来てるよ」と言うと、店員はそれを持ち帰る。青椒肉絲が届くと、同じようにまた別の店員が同じものを持ってやって来る。ようやく回鍋肉も届いたが、注文してから30分以上が経過していた。運ばれてきた回鍋肉は温かくなかった。すると案の定、また別の店員が「回鍋肉です」と言ってやってきた。これはまるでコントだ。

 持ち帰った料理はしばらく放置され、注文があった際に別のテーブルに運ばれていくのだろう。だから私の五目焼きそばはタイミング良くと言うか、注文からすぐに出てきたのだろう。連れの回鍋肉はいくつかの客の目前まで行っては戻され、冷めた状態で出てきたのだろう。これではいったい何のための携帯端末なのか、意味が分からない。面白かったけど、もう二度と行かない。

(秀)