第1804話 ■オープンカーが欲しい

 欲しいものがあると、それが本当に欲しいのかどうかを改めて考えるようなことはしない。それよりまず、どうすればそれを買うことができるかを考える。「分割にすれば月々いくら?」とか、「(今持っている)あれを売ったらいくらかな?」と。手持ちの金で間に合うようであれば、そんな考えさえしない。これは疑うべくもなく我が父親の遺伝子によるものだ。恨めしいがこればっかりは諦めるしかない。

 いろいろと考えている間に買い逃してしまう、というのが最もしょうもない。中古品の一点ものなんてまさにそうだ。清水の舞台とは言わないが、何度飛び降りたことか。もちろん、買ってしまってから、「しまった!」とか「買わなくても良かった」、最悪の場合には「買わない方が良かった」というのも、ままある。これはある種の仕方ないことだと思っている。そんなときは、さっさとオークションで転売なんてことになる。便利な世の中になった。

 そんなわけで、今私が欲しいのは車である。安い中古車であるが、オープンカーである。一生のうち一度くらいはオープンカーに乗ってみたいと、かねてから思っていたが、現実的な候補が現れた。年式は古いが走行距離が極めて少ない。実際にその車を見てきたが、電動のハードトップも動作に問題なく、屋根とトランクの間をテキパキと往復する。

 会社で同僚に話をすると、いろいろとネガティブな話題ばかり出てくる。二人しか乗ることができないことなどは、はなから問題ではない。古いから壊れる易いかどうかもこの際問題ではない。時間は経っているが、相当走っている新し目の中古車よりは余程コンディションは良いので故障は少ないのではなかろうか?(もちろん、希望的観測)。屋根を開けた状態のまま、故障して屋根を閉じることができなくなったらどうする?、なんてことも考えられなくはないが、考えてもキリがない。ましてやそこで運悪く雨が降ってくると考えることも。ただ実際に故障が起きた際、いざ部品が必要となったときにその部品が新品で手に入らない可能性が極めて高い。中古部品でも稀少車(不人気車)である。そもそもの母数が少ないから、極めてヤバイ。

 たかが車であるが、人生がちょっと変わるのではないか、という期待もある。かつて私は自分のコラムで「物欲は変身願望だ」と書いた。まさにその通りの車との出会いと言えよう。さすがにこればっかりは家人に内緒で買えるものではない。幸い、駐車場代が別に掛からないのが嬉しい。さて、オープンカーのオーナーに私はなれるだろうか?。まあ、今のこういうタイミングが一番楽しいのも事実である。

(秀)