第1821話 ■深呼吸するように

 「深呼吸するように、文章を書きたい」。おいおい、何やら再開した途端に文章のテイストが変わってしまったのか?。自問してみる。むしろこれまでは、深呼吸どころか、心臓がドキドキ、バクバクするような文書を書きたいと思ってきた。もちろん、そんな文章など書けた覚えはない。

 「自然に」ということかもしれない。そしてゆっくりと全体を大きく見定めて、やおら、そこから湧き上がってきた思い、感情を文字にする。そんな思いに至ったのは、数年前に松浦弥太郎氏の文章に出会ったせいかもしれない。「暮しの手帖」前編集長であるが、それに至るまでのプロフィールも面白い。

 最近はちょっと狙った、いや、狙いすぎた感じの文章が増えたものの、日々汲々とする生活に対して、優しく新たな視点を与えるようなテイストが私は好きだ。とりわけ、「最低で最高の本屋」を最初に読んで、氏のプロフィールなど一切の情報なく、飛び込んでくる文章を喜々として受け止め、読み進んだ。

 さて、自分が松浦氏の文章を意識するかどうかはさておき、そのようなテイストで文章が書けるかどうかは分からないが、せかせかとキーボードを叩くことなく、ゆっくりとした呼吸から文字を紡いでいこうと思う。

 深呼吸するように読んでもらえる文章を書きたい。

(秀)