第2話 ■ラジオ体操の鐘
- 1999.04.12
- コラム
夏休みの思い出の1つにラジオ体操がある。早起きが苦手で、あまり好きではなかった。それでもラジオ体操の鐘のことははっきりと覚えている。夏休みの朝、子供達を起こすために上級生が当番でその鐘を鳴らして町内を自転車なりで回るのである。そんなことをしても苦情が出ない良い時代の話だ。鐘のスタイルは福引で使用する、あの「鐘」である。
そしてその鐘がついに我が家にもやって来た。兄に当番が回って来たのだ。いつもは早起きが嫌いでもこのときばかりは早く起きようと誓うのである。当時私は5才。届いた鐘を手に取ってみると結構使い込んでいて、中のハンマー部分は紛失し、かわりに六角形のナットが針金で吊るしてあった。兄の自転車の荷台に乗り、これを鳴らす自分の姿を想像した。
ところが翌日、目が覚めたのは兄の鳴らす鐘の音だった。寝ぼけまなこで外を見ると、自転車に乗った兄が鐘を鳴らしながら、あたりを走り回っていた。
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