第200話 ■秘密

 「秀コラム」もこれで200話に達した。別にこれで収入を得ているわけでもなく、さぼったところで誰かに迷惑をかけるでもないことを、日々続けて来られたのは単に私の一人よがりの結果かもしれない。しかし、せっかく書くからには人に読んでもらいたいと思っているため、読者数や読者からのメールが励みになっているのは事実である。読者諸氏には改めて感謝申し上げたい。

 さて、読者からのメールによく書いてあることで、「毎日書くには大変でしょう」というのがある。大きく2つの意味だろう。1つは文章を書くこと自体。そしてもう1つは、「書くネタがよくあるなあ?」、ということだと思う。ちなみに私は普通の会社員である。原稿は主に前日の帰りの電車の中で書いている。逆に机にむかってからでは調子が乗らない。このため、電車に乗らない週末明けの原稿には難儀している。金曜日の帰りに書けば良いようなものだが、このときはしばしの解放感を味わう時間としている。書くネタに困ることはあまりないが、書き出した文章が二転三転した挙げ句、支離滅裂な内容となって最後は放り出してしまうことがあり、これが一番辛い。実際、書き始める時には書き出しとオチの構成は決まっているのだが、それが不十分なときに書き始めるとこんな目にあってしまう。

 世の中には「公然の秘密」という言葉がある。一見矛盾した言葉のようだが、例を挙げるとなると枚挙にいとまがない。実は「秀コラム」がそうなのである。別に私が有名人で匿名で書いているというものではない。毎日こうしてコラムを書いていること、それをホームページやメルマガで公開していること、これらが家人への秘密となっている。かつて社用でコラムを書いていた時は入稿前にその出来栄えを評価してもらったりもしたが、次第に「家族をネタにするのはやめてくれ」、「次は何書くの」と言い始めて来た。「秀コラム」は社用では絶対書くことの出来ない、自分の好きなテーマで自分の好き勝手なことを書きたくて始めた。そして、それは身近な人間にも侵されたくないため、「秘密」でスタートすることにした。

 実は毎日書くことよりもネタを探すことよりもこの秘密を守り通すことが最も大変なことである。ある日突然、「秀コラム」が終わったとすると、それは書くネタに困ったからではなく、急に本業の方が忙しくなったか、いや、それ以上に秘密が家人にバレたからというのが理由としてはあり得そうな気がする。例え理解が得られたとしても、それが家人に読まれていると思うと恥ずかしいし、本当に書きたいことが書けなくなっては、それは直接的に私の執筆意欲に影響してしまう。みなさんは秘密の共有者である。今後も「秀コラム」が継続出来ること、すなわち私の秘密が家人にバレないことを祈って欲しい。