第207話 ■祝 十郎

 手前味噌で恐縮だが、第200話の「秘密」には、まずまずの反響をいただいた。「秘密」という言葉が琴線に触れたらしい。「なんだ、みんな秘密が好きじゃん」。しかし、秘密とは不思議なものである。「誰にも言わないでね」、「誰にも言っちゃだめだよ」、などと言われて聞かされる話は果たして本当に言ってはいけないことだろうか?。どこかで漏れることを期待して、わざとリークしてはいないかと思って、・・・。私は本当の秘密は誰にも言わない。例え、時効が来ても。

 話変わって「月光仮面」。私にとっての月光仮面はアニメのそれである。’74、5年の頃だと思うが、土曜日、学校から帰ると30分のアニメ版月光仮面をテレビでやっていた。あの主題歌を聞いたのもその時が初めてだった。後からオリジナルの曲と聞き比べて、歌詞は同じままでありながらアニメ版の主題歌の方が数段格好良くアレンジされていた。肝心の話の方は全く覚えていないが、主題歌とオートバイの絵はとても格好良かったことを記憶している。しかし、所詮は「月光仮面」。この名前ではやはり垢抜けしないし、どこか貧乏くさい。

 その歌詞の歌い出し通り、「どこの誰かは知らないけれど」、「誰もがみんな知っている」。テレビを見ている誰もが大瀬康一演じる探偵が月光仮面であることは知っていながら、ドラマに登場している誰もがそれを知らない設定となっている。しかし、このような設定はウルトラマンなどでもお約束なので許してやることにしよう。ちょっと前、事件となると突然現れた、あの「月光仮面オヤジ」。誰もが彼を知っていながら、誰も彼の正体を知らない。彼こそ真の「月光仮面」と呼ぶにふさわしいかもしれない。私はあのオヤジが現れる度に「あれが大瀬康一だったら、最高におもしろいのに」と思ったりした。

 ここまで話を引きずっておいてなんだが、読者の中には「大瀬康一って誰?」という人がほとんどかもしれない。そんな人には「隠密剣士」と言ったところで話は通じないだろう。そして、祝 十郎というのは大瀬康一演じる探偵=月光仮面の名前である。世はまさに、月光仮面の歌の歌詞そのものの時代になってしまった。「どこの誰かは知らないけれど」。