第232話 ■柳ジョージ

 先週末(書き始めた時は確かにそうだったが、今となっては五週間前)はCDショップと本屋をはしごし、一万円も散財してしまった。しばらくはおとなしく暮らすことにしよう。CDショップでは’70、80年代のオムニバスCDのコーナーのところで随分時間をつぶした。このようなコーナーは店の特徴がよく出るところで、ちょっと小さめで、売れ筋のものしか置かない店ではまずお目にかかれない。

 15年前に初めて買ったCD、大滝詠一の「EACH TIME」が復刻レーベルで1,500円で並んでいる。かつては、LPレコード2,800円に対してCDは3,500円ぐらいの値が付いていた。しかも、CDの方がリリースが遅かったりもした。そんな懐かしいCDを眺めながら、柳ジョージのベストアルバムが出ているのに気がついた。これまでも彼のベスト盤は出ているが、今度のは30周年記念のセルフセレクション二枚組みという内容である。迷わずそれを買ったわけであるが、私も30年前の彼の活躍など知る由もない。知っている曲のクレジットを見たところで、20年ぐらいまでであった。

 六本木に「ゴールデンカップス」という店がある。生バンドの演奏が聞ける店だ。ここに10年ぐらい前であるが、当時の課長に連れて来てもらった。私が音楽に興味があると言うと、その課長はビートルズの日本公演を見に行ったとか、渋谷公会堂で「勝ち抜きエレキ合戦」に出た、とか会話が盛り上がり。そして、「和田静夫が六本木で演奏している店があるから連れて行ってやるよ」ということになった。和田静夫というのはダウンタウンブギウギバンドでギターを担当し、胸に「静」という字を書いたツナギを着ていた人である。そして、数週間の後、その課長に「ゴールデンカップス」に連れていってもらった。

(次号、「長い髪の少女」に続く)