第298話 ■酔っぱらい政治論

 日比谷線の電車の中、21時過ぎ。向かいの席に二人の酔っぱらいが座っている。ともにガテン系。歳はともに50才ぐらいか?。うち一人はガッツ石松に顔が似ている。さっきから盛んにガッツがもう一人に語り掛けている。話題は極めて不似合いな政治の話である。聞き耳を立ててみた。「森内閣も半年で解散だろう」、「田中以上の奴は出て来ないな」、「竹下なんか田中を裏切って、金丸までも裏切って」。しかし、結論が何であるのか良く分からない。ついでを言うと内閣の解散というのは正しくない。

 ところが、話自体は結構面白い。話題はマスコミ批判に移る。「報道の自由とか知る権利だとか言ってるけど、あいつら誰も責任を取りゃしない」、「人のプライバシー、売りもんにしやがって」、「権利を言うなら、責任を果たさなくちゃダメだ。最近の若いもんも権利、権利としか言いやしない」。今度は結論があった。さらに税制と国際問題まで話題は広がる。「これからどんどん老齢化していくんだから、消費税の値上げは当然なんだ」。消費税が上がれば、もろに負担増となる層のいでたちでありながら、なかなか思い切りの良い発言である。「それで文句があるなら、日本を出て行けば良いんだ。東京に文句があるなら、地方に行けば良いし、東京が好きなら地方から出てくれば良い。同じように嫌な奴は日本から出ていって、来たいって言う外国人がいるなら、来てもらって税金を払ってもらえば良いんだ」。

 さらに話が盛り上がるかというところで、電車は八丁堀に着いて、一人が下りていった。先程の熱弁をよそにガッツは黙ったままである。そして約10分後、ガッツも秋葉原で電車を下りていった。彼は先週の選挙には行ったのだろうか?。