第328話 ■SIDE-B

 サラリーマンにOL、学生、あるいは主婦。Webで実施したアンケートでの読者諸氏のプロフィールである。他にも、医療関係者や公務員、教職員といった回答もあった。これらはいわゆる「表の顔」である。これ以外に別の顔を持つ人が読者の中にもひょっとしたらいるかもしれない。木曜日の九時台の番組が終わって10時からの番組までの五分間。フジテレビでそんなサラリーマンの別の一面にスポットを当てる番組が放送されている。その名は「SIDE-B」。

 番組はざっとこんな感じである。前半は昼間の表の顔を紹介する。ある人は事務機器販売会社のサラリーマンだったり、またある人は外資系銀行の為替の担当であったり。わりと堅めの職業の人が一人紹介される。その部分が「SIDE-A」である。しかし、この番組のメインは番組のタイトル通り、後半のもう一つの顔の方だ。事務機会社のサラリーマンはセミプロ級のパーカッショニストだった。またある人はカバディの日本チームキャプテンである。そして、外資系銀行員(女性)はサンバダンサーだった。おそらくテレビ用にだと思うが、本番のあのフリフリの格好で踊っていた。いずれも腕前は相当なものである。ただ、ちょっとマイナーなのだ。これが日本舞踊の名取りや家元ではいけない。浅草サンバだからおもしろい。サッカーではいけないし、ピアニストやオーケストラでも面白みがない。このマイナーぶりがこの番組の面白さだと思う。

 妻はこの番組を見ながら私に話し掛ける。「あなたにもこんな別の一面でもあればねえ」。「俺にもあるよ、PTA会長」。「それは違うよ」。妻は私のことを読書好きでテレビ好き、暇な時はパソコンやってるか寝てる、普通のサラリーマンだと思っている。そうだ、確かに私はサラリーマンだ。しかし、こうやって毎日コラムを書くといった、別の顔、「SIDE-B」も隠し持っている。かなりマイナーだけど。妻はまだ気付いていない。しめしめ、敵を欺くにはまず見方から。ところで、敵って誰だ?。