第340話 ■最寄り駅
「どこに住んでる?」、「どこに住んでますか?」と聞かれることがある。別の会社の人との酒の席でこんなことを聞かれることが多い。一応答えるが本心では「そんなことを聞いてどうする?」と思っているので、答えた後にその相手に聞き返したりはしない。会話の糸口にとでも問い掛けたのだろうが、これで会話は途切れてしまう。
暗黙の了解として、「どこに住んでる?」と聞かれると東京近郊の人は最寄りの駅を答えることになっている。これは生活に電車がとても密接に関係していることと、街が駅を中心に構成されていることによる。そこで、「三軒茶屋」、「自由が丘」という回答は、「あのあたりに住んでいるんだな」というイメージができる。これがマイナーな駅だと沿線の名前を付けなければならなくなる(具体例省略)。ちょっと雰囲気は違うが「三鷹」、という答も非常に範囲が広くなるが最寄り駅がそうなら良いだろう。最寄り駅には単に距離感だけでなく、「田園調布」、「広尾」、「成城」(しかも実家)などという回答にはステータスも含まれていたりする。
ところが「横浜」という回答はいかん。おおよそ、横浜駅が最寄り駅の人はいないだろう。最寄り駅がそうなのか?、と聞くと、「そこからまた乗り換えて、...」なんて言い出す。中には横浜駅を経由しないケースもある。不思議と横浜(市)に住む人は「横浜」と答えるケースが多い。これを東京に当てはめると可笑しさが実感できるだろう。「どこに住んでる?」、「東京」。もし、何の臆面もなく東京駅が最寄り駅と答える人がいるとすれば、それは天皇家か?。いや、もしそうなら「二重橋前」というのが正しい最寄り駅かもしれない。決して利用することはないだろうけど。
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