第430話 ■機密費

 正しくは「報償費」というらしい。三谷幸喜脚本、田村正和主演のドラマ「総理と呼ばないで」の中でこの報償費が登場して来た事がある。官邸の金庫にとっさの時に備えて領収書不要の現ナマが保管されているという。そして、それは首相官邸の扱う官房機密費(内閣官房報償費)だけでなく、外務省にも外交機密費(外務省報償費)として存在したわけだ。新聞報道によると、外務省の報償費は年間約五五億七、〇〇〇万円にものぼるらしい。

 彼の当時の肩書きは「外務省要人外国訪問支援室長」。二億円(本当はもっと多いかも)にものぼる公金を横領したとして、外務省を懲戒免職となり、警察に検挙されることだろう。年収に不相応の買い物に対して、「親の遺産で買った」と言っているが、あまりにも子供騙しな嘘である。それだけの遺産を相続したからには、それ相応の相続税を払った事になる。そんなものは納税履歴を調べればすぐに分かるはずだ。それに、銀行口座の出し入れなんかすぐに裏が取られてしまうに決まっている。クレジットカードでの支払いというのもお粗末な限りだ。きっと後先考えなかったとっさの言い訳なのだろう。

 さて、彼の金の使いみちであるが、競走馬に高級マンション、クルーザー。競走馬は十数頭もいて、牝馬には愛人の名前を付けていたようだ。と言う事は愛人にも相当貢いでいた事だろう。今時分身銭を切ってこんな金の使い方をする人間がどれほどいると言うのか。いかにもあぶく銭の使い方だ。競走馬を買ったのは日頃から競馬好きだったからだろうか?。しかし、その割には賞金と購入費や維持費との収支計算は約一億円の赤字らしい。競馬好きならこんなへまはしないだろう。思慮浅く、「馬主=儲かる」と単純に考え、ここで儲けて使い込んだ金を稼ぎだそうとしたのではないだろうか?。

 二億円と聞いて、「生涯賃金」を思い浮かべた人もいるかもしれないが、それは税込みでの金額。普通に働いて二億円稼ぐのは大変な事である。しかもそれには所得税(翌年には住民税)が掛かるため、今回のように手取りで二億円を一度に手にするには三億数千万円の稼ぎが必要となる。ついでにあの規模のマンションもローンで買うとなると、利息が五千万や七千万は掛かるはず。ますますこの二億円の価値は大きい。

(秀)