第341話 ■視聴者の欲望

 しばらく、視聴者参加番組がほとんど姿を消し、冬の時代と言うべき状態があったが、最近はまた復活してきたようだ。しかし、その傾向はかつてのクイズ全盛の頃と比べるとかなり趣が違っている。以前は法律の枠も有り、賞金額も100万円が上限であった。確かにこの額でも有り難いに違いないが、出場者はそれ以上に「名誉」を欲して、これらのクイズ番組に出ていたような気がする。

 ところが最近の視聴者参加番組は実力本意というよりも、ギャンブル性の強いものが主流となっている。しかもそれを賞金で煽っている。顕著な例が「しあわせ家族計画」という番組だ。出場希望の家族に難関を与え、それをクリアすると家族が欲しがっている総額300万円までの賞品が貰える。だいたいその課題に挑戦するのは父親だ。彼を励ます家族の様子をVTRとして番組で流すのであるが、その姿は見るからに賞品のためのもので、真実の家族愛と呼ぶにはあまりにも見苦しい。そこには賞品欲に駆り立てられ、父親を叱咤する姿がある。

 そして挑戦に失敗し、賞品が獲得できないとなると、父親の威厳などあったもんではない。番組で泣き出す子供もいて、目もあてられない。その雰囲気のまずさと言ったら、しあわせ家族どころか、番組に出たこと自体が悪夢となってしまう。父親を励ますのなら、もっと平常時から、仕事で成果を出せるように仕向けるべきで、出場が決まって出演までの間、そのことが気になって仕事が手につかない状態や家族が浮き足立ってしまった状態を見ると、「この人達のしあわせって何だろう?」と思えてしまう。

 同じような姿は「筋肉番付」で我が子の挑戦がもう少しで賞金獲得となると、番組用の大きな小切手を持たされた母親が同じように強欲な姿をさらけ出している。あわよくばプロスポーツ選手に、という意識も働いているに違いない。こんなテレビ番組が増えてしまうのも、日常的に打算的な意識がはびこっていることの現れだろう。