第426話 ■コンタクトレンズ

 日々の生活の中でいろいろと落ち込むことが身に振り掛かって来たりするが、私にはコンタクトレンズ紛失という事態もその第一等級にランクインするほどの事件である。もう、一〇年ちょっとコンタクトレンズを使用している。眼鏡に比べると目の前の煩わしいものがなくて快適である。しかし、これも紛失したりしなければの話。だんだんと曇って来てレンズが寿命を終えるのには準備のしようがあるが、紛失という事態はレンズの寿命などには何ら関係なく突然現れ、私の視力を奪い、新しいレンズを入手するまでの当座の生活への不安をかきたてる。

 ハードコンタクトレンズは目尻を横に引っ張り、瞬きする動作で弾き飛ばす事でレンズを取り出す。このときレンズは目の下で待機しているもう片方の手のひらに落ちるか、まつげまたはまぶたに貼り付いている。さて、このいずれかにないときが大変である。顔に貼りついている時はまだ良い。衣服に付いているのはその状態で見つかる事よりも、そっと振り払って、床に落ちた状態を拾い上げる事が多い。ただし、私の経験ではこのときどこに飛んだか分からずに発見できないケースが最も多い。

 なくすのは確かに外す時の方が確率が高いが、それ以外にも危険なタイミングはある。洗いながら排水溝に流してしまうケースもある。特に寒い時期は水も冷たく、手の動きも緩慢で危険度が増す。朝になくしてしまうとその日の生活にも影響が出てしまう。眼鏡は度が合わなくなったタイミングでコンタクトを使用始めた事もあり、ほとんど役に立たない。車の運転もできない。それに第一等級のショックのため、会社に行く気も萎えてしまう。実際に会社を休んだ事もある。

 「使い捨てのレンズだったらこれほどのショックは感じなくてすむだろうなあ、スペアのレンズもあることだし」。しかし、金銭的な負担を考えると使い捨てレンズへの全面移行の敷居は高い。せめては緊急避難的なスペアレンズとしてストックする事でも検討しようか。というわけで私は本日凹んでいる。

追伸:見つかりました。元気復活。足の裏に貼り付いた状態で発見。割れなくて良かった。

(秀)