第48話 ■国際青少年ロッジ

 その建物は福岡県山門郡三橋町にある。大学時代につごう3、4回そこを利用したことがあるが、あまりにも辺鄙な所で必ず毎回迷子になったあげくにたどり着いていた。周りの人に道を聞こうにも、まずそんな所を知らない。2回目からは目印が確認できたので道を聞くにも、「国鉄(JRではない)の三橋駅」と言えば通じるかと思ったが、それも無理だった。ローカル線が廃止になってからは頼みの駅すらなくなってしまっている。

 ロッジと言うからには宿泊施設である。ゼミの合宿などでお世話になるのだが、初めて訪れた時に、周りの人に道を聞いてもダメな理由がよく分かった。それは田んぼの真ん中にどか~んと建った、一軒家なのだ。普通の家庭用の玄関、家庭用のポスト。その横に「国際青少年ロッジ」という看板が掲げてあった。確かに大きめの家ではあるが、田舎ではみんな家がでかいのでやはり目立たない。

 けど、中身は国際的なのだ。変な置物がズラリと並んでいるとかではない。まず、ご主人。この人は酋長である。本当にアフリカのある村落の名誉酋長らしい。もちろん現地語も含め外国語が堪能である。奥さんもよく旅行に出かけるらしいが、観光とは一切違い、「砂漠をバイクで横断して来た」などと言っていた。二人とも本を出すなど、その世界では有名らしい。宿泊の予約を入れようと電話をした時に、この酋長に「家内がいないから食事の準備ができない」と断られかけたこともあった。けど、そんなときも素泊まりで押し掛けたりした。

 他の宿泊客と鉢合わせになることはなかったが、この二人から色々と国際的な話が聞けた。宗教的な理由で食材に気を遣うことや留学期間が終わっても国に帰ろうとしない学生の説得。ホームステイ先の相談相手など。田んぼの真ん中の「国際」の落差と言い、これらのアンバランスさが面白かったりする。