第52話 ■少数派(マイノリティー)

 (できれば今回のコラムは密室で読んで欲しい。エレベータの中ならなおさら良い)

 エレベータに乗っているときに「このまま止まったりしないか?」と思うことがある。それも見知らぬ女性、しかも二人きりで乗っているときに思ったりする。期待しているわけではない。むしろ逆である。恐怖心などはないが復旧するまでの間をどうつぶせば良いだろうかという不安がよぎる。どんな会話をすべきなのか。見ず知らずの女性と密室に二人きりの状態で。よっぽど一人で閉じこめられた方が気が楽そうである。鼻歌も歌ってられるし。そんなときのために当たり障りのない話題を用意しようにも、ネクタイのタグの話や「Virginコーラはおいしくないんだけど、知ってた?」、「こんなチェーンメール届きましたか?」、なんて、話している状況ではない。場を和ませようとした笑顔に相手が身の危険を感じて、持っていたバッグを前に抱きかかえ、警戒したりしないだろうか?。こんなことを考えてしまう私はマイノリティーであろうか?。こんなことを発想すること自体ヤバそうだが、これを読んだあなたもエレベータに乗る度にこのことを意識してしまうだろう。シメシメ。

 家にたどり着いてまずやることは、冷蔵庫を開けることである。ペットに餌を与えようというわけでも、「まずはお疲れ様のビールを」というわけでもない。目的はない。中身はどうでも良い。ただ開けて中を見ればそれで良い。風呂から上がって台所を通ったら、また冷蔵庫を開ける。やはりビールではない。さっきと違うのは夕飯の残りがラップに包まれて入っている程度のことである。確認出来ればそれで良い。ただ野菜室やフリーザまでの全ての扉を開けるほど重傷ではない。俺ってマイノリティー?。