第59話 ■切ない

 早いものでは3クール目に入ったものがある。テレビドラマの話である。「新・俺たちの旅 Ver 1999」も始まった。オリジナルの「俺たちの旅」は以前にもコラムで書いたが、’75年の作品である。「新」の方はV6のカミセン3人が演じている。彼らには何の思い入れもないが、オリジナルの信奉者としては毎回つきあわなければならない気がする。

 オープニングのタイトルバックには驚いた。中村雅俊の「俺たちの旅」が主題歌で、オリジナル版と同時にそっくりに作られた、新のタイトルバックが流れたからである。噴水にドカドカと入っていくシーンや3人肩車も再現されている。しかし、中身はオリジナルには遠く及ばない気がしてしまい、非常に残念である。それは何故か?。まず1つはキャスティングであろう。やはりカミセンではオリジナルに比べて違和感がある。リアリティがないのだ。2点目は設定がオリジナルの原作とかなり違ってしまっている点。原作ではカースケとオメダは大学のクラスメイトであるし、カースケとグズロクは同郷での先輩と後輩の間であった。かたや寮を追い出され、かたや家出をした、カースケとオメダが赤提灯でグズロクと出会う。カースケとグズロクが再会し、3人のストーリーが始まる。しかし、今回は何の因果もない3人が偶然出会うところから始まった。

 それと、3点目のストーリーとして最も違うところは「切なさ」の有無である。原作および前作では毎回必ずしもハッピーエンドとはならない。しかしそれ以外の選択ができないわけで、その切なさ、むなしさが毎回残るのである。グズロクがカースケに「お前と出会って俺の人生はめちゃくちゃだ」と怒るシーンが度々ある。それでいても相手を裏切ることができない。オメダもカースケの男気に惚れ、せっかくの就職もふいにしてしまう。最近はこんな「切ない」ドラマがとんと無くなってしまった。スカッと溜飲を下げるようなものも良いが、たまには切なさを感じるような作品も見てみたい。金を出してでもこんな感じを味わいたくなるときがある。