第693話 ■らいおんハートの置き薬

 「夜空ノムコウ」は後半部分が「の向こう」ではなく、カタカナ表記であるところが良い。「夜空の向こう」ではあまりにも垢抜けしない。わざわざカタカナ表記にした理由は「無機質で非日常的な感じを出すため」と、解説されていたのをテレビで見た。歌っているときはカタカナだろうが、漢字ひらがな混じりであろうと変わりないが、タイトルとして目にしたときの印象は大きく異なる。ちなみに作詞はスガシカオ。

 一方、「らいおんハート」も「ライオンハート」ではいけない。もちろん「らいおんはーと」でもいけない。「ライオン」ではあまりにもリアルに動物のライオンを思い浮かべてしまうし、「はーと」とここまでひらがなにしてしまうと、いくら癒しがテーマの歌でも脱力し過ぎる。

 ところで、「らいおんハート」の歌詞にも独特の世界がある。「君はいつも僕の薬箱さ」。こんな口説き文句がこれまでにあっただろうか?。この歌以前にこんなフレーズを使用している人がいたとしたら、あなたの作詞能力は野島伸司と双璧だ(この曲の作詞は野島伸司 )。そもそも薬箱と言われて女性は嬉しいのだろうか?。こんな言葉で浮かれてしまいそうなあなたは自分の家の薬箱の中を覗いて欲しい。

 薬箱と言われれば、置き薬だ。置き薬は薬箱ごと置いていく。箱の中にはテレビCMでは到底目にすることのできない、時代遅れなパッケージの薬が並んでいる。そこで、「らいおんハート」にあやかって、箱を開けると「らいおんハート」の曲がオルゴール(電子音でも可)で鳴る、という薬箱はどうだろうか?。うちの家人などはそれだけで飛びつくかも知れない。ケガして血を流していたり、頭や腹が痛いときにその音があなたを癒してくれるかどうかは知らないけれどね。

(秀)