第141話 ■レフリー
金八先生を見ながら、この先の展開が気になって仕方ないがことがある。今回のシリーズで起きるクラスでの様々なトラブルは全て兼末健次郎(役名)という少年が仕掛けている。初回の放送で担任(ラサール石井)を病院送りにしたのも、実際に手を下したのは別の不良生徒であるが、裏で彼らを操っていたのはこの健次郎であった。彼は表向き優等生である。ガリ勉タイプではなく、文武両道で教師達や周りの親達からの受けも良い。金八も含め先生達は誰も彼が真の悪であることに気付いていない。演技もなかなかうまく、瞬間的に見せる悪の顔には「ドキッ」とさせられることがある。見ている側に「憎らしい」と思わせることは悪役への称賛でもある。所属がジャニーズ事務所という点から考えれば意外な役どころだ。
裏で悪いことをしていて気付かないというのは昔のプロレスのレフリーようだ。会場の観客やテレビの視聴者はみんな知っているのに、一番近くで試合を見ていながら、ブッチャーが栓抜きをパンツから取り出し、馬場の額に攻撃を加えてもレフリーのジョー樋口はその反則に気付いていない(振りをしている)。タイガージェットシンが猪木や坂口に凶器攻撃を仕掛けてもミスター高橋は気付いていない(振りをしている)。盛り上げるために彼らは突然額から血を流すレスラーを見ても、平然とプレーを続けさせ、自分が攻撃を受けた時だけ相手に反則負けという決定を下す。たとえ気づいていても最初からそれを指摘してはいけない暗黙の掟があるようだ。
レフリー金八はまだ健次郎の反則に気付いていない。しかし、最後までバレずに卒業を迎えるということは考えられないため、そのうちいずれかの結果が出ることだろう。悪は悪として裁かれるのだろうか。最近は勧善懲悪の構図が崩れたドラマが多い。「TEAM」は少年犯罪をテーマにしているが、罪を犯した少年達だけを悪にしてはいない。また、悪を主役にしたドラマも現れた。「恋愛詐欺師」は詐欺師役の椎名桔平が主役のドラマである。「OUT」は主婦が次々と殺人を犯すストーリーであるが、主役田中美佐子が犯人という、思い切ったキャスティングだ。彼女はこの前まで「ママチャリ刑事」だったのに。
-
前の記事
第140話 ■忍者 1999.11.09
-
次の記事
第142話 ■UHF 1999.11.11