第2024話 ■BCP研修のこと

 はっきりとした時期についてはあいにくうろ覚えだが、約10年ほど前、私がまだ会社勤めをしていた頃の話。会社で「新型インフルエンザ」への事前対策ということで、全社員に対し、就業時間内などに研修が行われていた。BCPとは「事業継続計画」のことである。このときは新型インフルエンザがその対象だったが、その後の東日本大震災により、自然災害時(後)にも、事業が継続できるようにと、その対象が広がることになる。

 私が勤めていたのは販売会社だったが、別にそのような一大事の際に、商売をそのまま継続しようと言うものではない。そんな中、私は一般社員とは別の研修への呼び出しが掛かった。会社の方針として、たとえ売上が停滞したり、お客様からの代金の回収が滞ったとしても、支払うべき決済は必ず実行する、ということだった。社員の出勤を止めていても、決済日の前にはこれらの事務作業が発生する。そのための要員として私にも召集が掛かった。

 当時の会社の基幹システムはいくつかに分割されていて(その方が、個々に改修できて、運用上は相応しいのだろう)、実際に使用できる権限も細かく分けられていた。そんな中、私はそれを専門職としてわけではないものの、処理件数がそれほど多くなかったこともあり、自部門の伝票処理は自前でやっていたので、結構幅広くシステムの利用権限を持っていた。そういう便利な人としての召集だった。とにかくそういう非常事態には、その業務処理のための出勤の指示があると、それに従わなくてはならない。電車やバスは使用せず、タクシーを利用して出勤するようにとの、事前の指示だった。

 結局、私が在職中にはそのような非常事態は発生せず、事前の研修は無駄だったが、それは喜ばしいことだった。かつての同僚などのSNSを見ると、現在は多くの社員が自宅待機でのテレワークながら、輪番で数名は出勤しているらしい。きっと今なら決済データの入力などリモートでできてしまうことだろう。そんなことを思い出した。

(秀)

※BCP—- Business Continuity Program